最新情報NO5  05年6月17日記載

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照明器具が変わる。巷にあふれるLED 照明器具

昨年末、街を彩るイルミネーションが従来の赤、黄色などに加え、青色や白色が一気に増加したことが話題になった。
 これはご承知の通り、日本で発明された青色LEDを用いたイルミネーションであり、青色LED 、及び白色LED(青色LED、或いは近紫外LEDと蛍光体の組合せで白色が作られる)の輝度が増加し、かつ台湾などでの生産が急拡大して価格が安くなったために一気に普及したことによる。多くの交差点の信号機も赤、橙、青緑のLEDに置き換わり、非常に見やすくなっていることにお気づきの方も多いと思います。そこで、巷にあふれているLED照明器具について少し調べたことを紹介したい。
 
 <ホームセンターなどで販売されているLED照明器具>
 一昨年くらいからホームセンターや電気店では白色LEDを用いた携帯用ランプ(従来の懐中電灯)が商品展示され、小型でありながら明るく、かつ電球交換が不要(約5万時間)ですよ、というキャッチフレーズが目に付くようになった。私もヘッドランプ型を購入しているがそれには白色LED が8個組込まれ、単4乾電池3本で100時間以上の使用が可能である。LEDの点灯も2,4,8個と切り替えられることができ、状況に応じて明るさを切り替えられるのことも便利である。
  さらに太陽電池とLEDを組合せ、庭園などに設置するエクステリヤ照明器具や、人体センサなどを組込んだ防犯ライトなども数多く並べられている。 これらの多くには消費電力が少なく安価な橙色のLEDだけでなく、白色LEDも使用されている。夜間には内部に組込まれた二次電池で動作している。LED数個と明るさセンサや人体センサが組込まれた照明装置が1,000円程度から販売されており、その高機能性に比較して極めて安価な価格であることに驚かされる。
 一方、LED単体としては従来の小型電球と同じ形状、口金を有し、現状の100V商用電源にそのまま適用できるランプ型のものも常夜灯やスポットライト型として販売され始めている。
  これらは白熱ランプに比較して、発熱も殆どなく消費電力が極めて小さいこと、LED寿命が数万時間以上と従来のランプに比べて10倍以上も長いなどの特徴を利用したものです。

 <液晶バックライトの光源>
 従来から赤色のLEDは上記の特徴を利用して、電源が入っていることなどを示すパイロットランプや小型表示装置などに使用されてきましたが、LED材料や素子構造の技術進歩により発光色も橙、青、緑と開発され、特に白色LEDの性能が向上するにつれ、液晶表示装置のバックライトとして主に携帯電話や小型の表示装置に組込まれ生産が急拡大してきました。 生産量が増加すると応用範囲の拡大も試みられ、各社の開発競争が激化し、性能改良とコストダウンにも拍車がかかっています。 最近では発光波長の制御が向上し、その結果、LEDバックライトを組込んだ液晶テレビの演色性が向上し、高価な大型高性能液晶テレビも発売されるようになりました。

 <蛍光灯を超える>
 本年4月25日発行の「日経エレクトロニクス」には「LEDが蛍光灯を超える」という特集記事が18頁に亘って掲載され、この中にLED開発の現状が技術面、応用面、将来動向などが詳しく述べられている。2010年には蛍光灯と同程度の性能を有するLED照明器具が同程度の価格で供給されるようになり、この牽引役がさらに高輝度の白色LEDが材料開発や放熱対策、長寿命対策された実装技術によることを紹介している。
 また、この場合の特徴として蛍光灯照明器具では電源設計が技術ノウハウになっていたがLED照明器具ではこの技術障壁が低下し、多くのメーカに参入チャンスが生まれることも指摘している。
 本年3月のライティングショーでは既存の大手照明器具メーカが蛍光灯に変わる白色LED照明器具をまだ高価ではあるが商品化してことをPRし、着々と準備していることを見せ付けていた。
 さらには省エネ、長寿命の他に高輝度特性も活用して、自動車の車内灯やテールランプなどにも使用され始め、規制が変更されればヘッドライトにも組込まれる可能性が高い。

 <植物栽培用の光源>
 LEDの照明で面白い応用例の一つに野菜栽培などで植物の成長に必要な波長だけを組み合わせ、これを活用した植物工場や植物育成装置が実施されていることである。1930年代から発芽に影響する光波長の研究が進み、成長に必要な光合成に有効な波長、花芽誘導に有効な波長などが、さらにはパルス照明による光合成の促進効果などが解明されるに従い、これらの光源にLEDが省エネや制御面で有効であることがで確認され、次第に普及が進み始めている。葉もの野菜を生産する植物工場では今後各種の波長のLEDが導入されるものと期待されている。

 <新しい照明装置の時代へ>
 エジソン白熱電球の発明 (1879年)、GE社インマンらによる蛍光灯の発明(1935年)、そして次世代の新しい照明装置が赤色LED の開発(1960年代)、青色LEDの開発(1980−90年代:赤崎勇教授や中村修二氏ら)により築き上げられた白色LEDによってその時代が拓かれつつある。

 この新しい照明装置は単に照度を確保するだけでなく、波長の選択性や熱を発生しないことなどの特長を生かした医療機器(内視鏡光源や診断装置)に、さらには従来の照明用光源では不可能であった高速の光変調機能を利用した簡易光通信装置としても幅広く活用されるものと期待され、実用化が進められている。
  明るくカラフルな2010年を期待したい。